kenichi kurosawa : 黒沢健一オフィシャルサイト


訳;Remembering Kenichi

 

90年代の初め、黒沢健一と知り合えたことは幸運だった。私はNHKや東京の企業に曲を書いたりレコーディングをする仕事をしていた。それが今、私が尊敬する友人、岡井大二氏と繋がることになる。ある日の午後、彼がプロデュースした3人組、L⇔RのFirst CDを持って私のスタジオにやって来た。私達は和気あいあいと意見を交わした。

 

私は彼らの音楽的才能に満ち溢れたCDに感動した。彼らの曲は一見基本的な音楽的語彙を使いつつも、当時の文化的時間枠を超越しているように感じられた。また、彼らの魅力的で温厚な人柄にとても感心していた。こんなにも素晴らしい曲を生み出す控えめで爽やかな彼らと出会えて実に心地良かったことを覚えている。

 

それが彼らに対する最初の印象だった。その後、健一が自身の音楽で成功した後でもその人柄は変わることはなかった。健一は飾らない穏やかな人柄で、L⇔R 3人の中で誰がクリエイティブな部分の中心だったのかは分からない程だった。

 

最初のミーティングの後、健一が私に彼の曲に英詞をつけて欲しいと言った。その曲は「Motion Picture 」となった。私は以前、日本のミュージシャンに歌詞を提供したことがあったが、その時の依頼はそれとは全く違っていた。通常日本語の歌詞が送られてきて、その意味とメロディーに一番合う英語を見付けるという作業なのだが、健一は不思議なサウンドで歌っているデモを送ってくる。その言葉は理解出来るものもあれば、今まで聞いたことがないものもあった。

 

健一が創り出す音楽は私が命名するならば、「POP-lish 」(また、おそらく「rock’n ese 」)。それらは英語や日本語の枠を超えている。「Hear Me Now 」を聴いてみて欲しい。ROCKやPOPミュージックを独自の言語で表現しているかのようなのだ。

 

その後、他の日本人アーティストが似たような手法で歌うデモを聴いたが、健一のようにミステリアスな言語で「流暢に」聴こえてくるのは他にない。健一の「rock’n ese 」はまるで英語の言葉の可能性を吹き飛ばすかのようであり、また、言葉選びの探求を惜しませない世界観があった。唯一難しかったのは、どの可能性を選び手放すか?だった。

 

その難しかったことのひとつに挙げられるのは、「Hear me now 」の曲のタイトルだった。私は健一は「Here we now 」(聴いてみて)と歌っていると思う。英語がぼやけて聞こえるので、「Here we’re now 」か「Here,we now 」かとも思った。どちらもそう聞こえるし、どちらの意味にしても面白い。でも、「Hear me now 」がアルバムのコンセプトに近いし、空耳方式では彼がそう歌っているとする方が近い。健一からの依頼には時々こういった類の難題があった。思えば依頼を断る選択肢もあったのかも?

 

健一の歌では私は出来る限り彼本来の語調やサウンドをそのまま残すようにした。ソングライティングでは、時としてサウンドが言葉の意味よりも大事になることがある。健一の曲はサウンドが特に大切であった。彼には独特の表現力豊かな歌い方があったので、私はいつもそれを維持するように努めた。

 

私は一度だけ健一の作曲の場面を目の当たりにしたことがある。その時私達はLAで「Land of Riches 」のアルバム制作をしていた。L⇔Rのメンバー、岡井大二氏、彼等のマネージャーと私はスタジオ近くの長期滞在型ホテルに宿泊していた。ある夜、ビールを何杯か飲んだ後、1人ずつ順番にギターを廻して歌った。健一の番になって彼は「POP-lish 」な弾き語りを始めた。彼は、落ち着いた流れから徐々にキーやテンポを変化させて行った。そのAメロ、Bメロ、Cメロの一つ一つがヒットソングになり得るメロディーで繰り返しは全くなかった。主題となるモチーフが消えては現れる。彼には絶え間なく流れるような素晴らしいアイディアがあり、様式に囚われない自由さがあると知った。

 

多くのソングライターは曲の初めから終わりまで、降って湧いてくる瞬間がある。それは私の人生においても何度か起きたが、滅多に起こることではない。LAの健一を見て思ったのは、彼の中には常に音楽がある。まるで水道管の中の水のように、蛇口をひねれば音楽が一定に流れ出るように素晴らしいアイディアが溢れてくるのだ。私が思うに、健一が挑戦しなければならないことは、そのアイディアを絞り込むこと。それを彼と同じように取り組めたことは私にとって素晴らしいひと時でもあった。

 

“もう一度聴いてみよう!”

 

さて、ここで私からあなたに問題です。「Hear me now 」のアルバムから健一が歌う「Pop -lish 」や「rock’n ese 」の曲を聴いてみて下さい。曲や曲の一部を選んで、健一だったらこう歌っていたかもしれないと思うあなたの考えを長くても短くても良いので書いて下さい。もちろん私が書いた歌詞と違っていて大丈夫。私とスタッフで読んで優秀なアイディアはこのサイトで発表します。健一の曲を聴いて、あなたのアイディアを送って下さい!

 

| - | 2019.10.21 Monday |
HEAR ME NOW
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黒沢健一 Banding Together in Dreams
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